皆さま、宇多田ヒカルの新譜「Fantôme」はもう聞かれましたか?
私は昨日やっと買って、通しでじっくり聴いているところ。
宇多田ヒカルが復帰する、朝ドラの主題歌もやっている、という話は知っていたのだが、私の場合、twitterで椎名林檎とのコラボ曲があることを知り、それを聴いてアルバムを買うことを決めた。
初めて聴いた時は衝撃を受けた。
GyaoでPVが見られます↓
宇多田ヒカル/二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00101/v12399/v0871400000000545201/?nc=1
宇宙で女2人だけのデート。
このPV好きすぎる…!
世界観、2人の表情、モチーフ…もろもろ全部良い。
声質が全く違う二人の声が絶妙に合わさっていて、ゾクゾクするほど気持ちがいい。
何よりも歌詞が圧倒的としかいいようがない。
「クローゼットの奥で眠るドレス
履かれる日を待つハイヒール
物語の脇役になって大分月日が経つ」
「朝昼晩とがんばる 私たちのエスケープ」
「家族の為にがんばる 君を盗んでドライヴ」
と、ひとつひとつのフレーズが力を持って迫って来る。人間であり女であり母である宇多田ヒカルと椎名林檎が歌うからこその説得力。
メロディーはバカンスのリラックスした雰囲気もありつつ、前へ、前へ進む。時間が進んでいく。日常を生きていく。そんな中での非日常。
お母さんたちへの応援歌にも聞こえる。少なくとも私にはそう聞こえた。
私は、宇多田ヒカルが「母になったから」音楽が変わったとか、声に温かみが増したとか、そんなことはこじつけみたいで、失礼に感じられて、言いたくない。
(ちなみに私は復帰後の声が本当に好きである。抑制のきいた、落ち着く声。)
しかし、この曲についてはご本人もインタビュー(http://realsound.jp/2016/09/post-9393_entry.html)で「日常と非日常の危うい関係を表現したかったので、母であり妻でもある二人なら説得力が増すし面白いかなと。」とおっしゃっているので、「母や妻である」ことがこの曲のキーになっていると考えていいのだろう。
ここで椎名林檎ファンであれば、「ありきたりな女」という曲を思い出す人もいるのではないだろうか。
「あなたの命を聴き取るため、代わりに失ったわたしのあの素晴らしき世界。「GOODBYE!」」
子どものために、「子どもがいなかった頃の世界」にさよならを告げる歌。
中でも、「出会す場面はすべてハイライトで、みな、掛け替えのないキャストだった。」の部分には涙が出る。まさしく身の回りの人がすべて、そして自分自身すら、「物語の脇役にな」ってしまうのである。
しかし悲嘆に暮れているだけの歌には聞こえないのは、おそらく「子どもが生まれた後の新しき世界にHELLO!」とも言っているのだろうな、と思えるからだ(私だけ?)。
私には子どもがいないが、ネットのせいで耳年増になっているのか、母になることに対し、暗い気分になってしまうことがよくある。
たまに子どもを預けて遊びに出ることすら難しい、子どもの面倒を見てくれる人もいない、いたとしても遊びに出たら(時には夫からさえ)非難される。
その一方で妻に子育てを全部押し付けて自分は遊びまわる夫もいる。
まさしく「二時間だけのバカンス」がとれるかという状態だ。
その他、世の「お母さんたち」をとりまく理不尽は枚挙にいとまがない。
友情で結ばれている二人が、母であろうとなかろうとすごい音楽を作り続けているこの二人が、この曲を歌ってくれたから。
「忙しいからこそ たまに
息抜きしましょうよ いっそ派手に」