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日々

映画「虐殺器官」

映画「虐殺器官」を見てきた。

私は伊藤計劃の「虐殺器官」「ハーモニー」という小説がどうしようもなく好きだ。(2つの作品は、それぞれで完結しているが、前者の世界が後者の世界に繋がっている)

初めて読んだ時は、衝撃で頭から離れなくなって、作品世界から帰ってこられず、しばらく他の本が読めなくなったりした。

映画化されるのであれば、観に行かない訳にはいかない。

 

虐殺器官」劇場版は、途中で制作会社が倒産し、それでも制作陣が新しいスタジオを立ち上げ、制作された作品だ。当初は2015年11月公開予定だったと記憶しているが、そんな事情があり2017年2月3日の公開となった。

ずっとずっと、待っていた。

 

劇場版は、原作に忠実なところが多いものの、アレンジされた部分もある。

自分にとって思い入れの深いシーンも、カットされたり、変えられていたりした。2時間という時間の制約の中で、説得力を増すためにこのアレンジは必要だったんだろうな、ここはバッサリ切らないとしょうがないよな、と思える部分もあれば、制作陣の意図がどうしても理解できない部分もあった。

 

でもひとつだけわかっていることがある。

制作陣が、伊藤計劃の「虐殺器官」という作品をこれ以上ないほど愛しているということだ。

観客もそうだ。この小説を愛し、ずっと公開日を待っていた。

 

みんなが伊藤計劃のファンで、原作を愛している。

読者の数だけ、「虐殺器官」の世界がある。

この映画はひとつの解釈なのだ。

そして私の思い入れも、ひとつの解釈にすぎない。

原作者が亡くなっている以上、「原作者の意図どおりの解釈」なんて、存在し得ない。

でも、みんな作品を愛しているのは同じ。

そんな、ある意味当たり前のことがわかった映画だった。

project-itoh.com

 

 

マーティン・スコセッシ「沈黙-サイレンス-」

映画「沈黙-サイレンス-」を観て、その足で本屋さんに行き、遠藤周作の「沈黙」を買って、一気読みした。恥ずかしながら今まで読んでいなかった。でも読めて良かった。

chinmoku.jp

遠藤周作「沈黙」の映画版。


映画では凄惨な映像がダイレクトに来るので、主人公の心情や、神の「沈黙」のテーマに強く惹きつけられたが、原作の小説では、「日本にキリスト教を伝えても、神の形が日本流に変えられてしまう」「日本人は人間とは全く隔絶した神を考える能力をもっていない」「神の概念を持てない」といった、日本と西洋(と簡単にいっていいものかはわからないが)の思想的な違い、その間の深い溝に関する記述に目が行く。

しかしこれはキリスト教に限ったことだろうか。
特に映画では仏教が日本に浸透しているようなことになっているけど、「実は仏教も日本流に変えられている」と私は高校で習った。日本の仏教における極楽浄土信仰は、結局次のステップでの「現世」でしかない。日本人は現世利益信仰から抜け出せない。「輪廻転生からの完全な解脱」という概念が持てないのだと。
仏教にとっても、日本は沼地だったのだろうか?

 

観る人を選ぶかもしれないが、見応えのある映画。2時間41分という長さは全く感じない。
観た人、読んだ人と感想を話し合ってみたい。みんなどういう感想を持つんだろう?

半音進行

半音進行が好きだ。

じわじわと、徐々に半音ずつ上がっていく音程が好きだ。

焦らされて、追い詰められていく感じが好きだ。

 

そういう感覚を持てなくなって、どれぐらい経つだろう。

音楽をやめてもう6年が経った。

音楽は愛あるストレスという感じで、辛いけど、ごく稀に上手くいった時は、そこから快楽を引き出すことができた。

エロい和音がハマった時は胸がキュウウンと締めつけられた。

私にとっては、性行為なんかよりずっと強烈な快感。

その快感を得られなくなったのはさみしい、気がする。

台湾映画「私の少女時代」

看了台灣電影「我的小女時代」。非常有趣!!

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台湾映画「私の少女時代」を見てきました。大傑作!
http://maru-movie.com/ourtimes.html
HPを見て「単純な青春もの?ベッタベタのラブストーリー?(どちらも超苦手)んー、でも台湾含め香港などアジア諸国で記録的大ヒットとあるしな」ということで見てきました(台湾の友人から、「見たら感想教えてね!」と言われたのもある)。

物語は大人になった主人公が少女時代を思い出すところから始まります。「台湾人の懐かしい思い出がいっぱい詰まっていて、台湾人以外が見ても面白いかはわからない」と台湾の友人からコメントをもらいましたが、日本人が見てもどこか懐かしく、「国を超えても同じ部分はたくさんあるなあ」と思えました(そうそうそうそう!と心の膝を何度も叩く)。
リア充爆発しろ」的な単純な青春ラブストーリーでは決してないし、コミカルで笑えるし、泣けるし、伏線が回収されていく様は快感だし、色んな要素がぎゅっと詰まっている、一大エンターテインメント作品だと思います。

年末にこんな素敵な映画に出会えて嬉しいです。

あと…個人的に台湾に行った時のことを思い出して泣けました。濃い緑、温かい風土、強い雨、温かくて楽しい台湾の人々。名前入りの制服(日本と違ってフルネームが制服に刺繍されているのです)、現地で案内してもらった台湾の高校。今すぐに台湾への切符を買いたい。
台湾ファンは映画館に急げ~!

「この世界の片隅に」

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 「この世界の片隅に」、これは凄い映画。シン・ゴジラにハマって、これで今年自分にヒットした映画は終わりかな、と思っていたところにズガーン!と来ました。
戦争ものです、でも火垂るの墓みたいにただひたすら悲痛なだけではないのです。柔らかくて、楽しくて笑える場面もある。戦時中でもしたたかに生きていた人々。
お年寄りから聞く「昔話としての戦争」とは違うリアル。あの時代が現在と地続きだとわかる。
もう言葉にできない。
単館系映画ですが、上映映画館がじわじわと増えているようです。新宿では立ち見が出るほど。
映画の力を感じられる一本。オススメです!

 

公式サイト

http://konosekai.jp

 

「無駄な一年」なんて無い

28歳になった。

私はどこかで、歳をとるのを恐れていた部分があったと思う。
歳相応に成長できていないからだ。
特に休職に入ってからはそうだ。寝込んで何もできず、無為に過ごしたと感じる日が多い。

しかし「ほぼ日手帳」(今年から愛用している)を見る限り、この一年間、全く何もしていなかったという訳でもなさそうなのだ。本は60冊以上読んでいるし(ほとんど本を読まない私にとっては快挙である)、美術の展覧会にもいくつか行っているし、映画も何本か見て、新しい音楽にもたくさん出会った。動ける日はできるだけ散歩もした。

もちろん、読書家の人や映画愛好家や、本当に音楽が好きな人には遠く及ばない。
英語を勉強して息切れして、今の自分の「身の丈」も知ることができたというのもある(そのうち、もう少し元気になったら再開したいとは思っている)。
買い物はじゃんじゃん失敗し、欲望との向き合い方も少しは勉強した。

私自身は全く素敵な人間ではないが、素晴らしい、素敵なものにはたくさん出会った。
赤点かもしれない。しかし、ゼロではなかったのだ。

放っておくと記憶も薄れて、「ああ今年も何もできなかった」と思いがちだが、ほぼ日手帳やブログのおかげで、その時々を、何とか生き抜いてきたのだと思い出すことができた。

ブログを始めたのは、雨宮まみさんのこの記事が大きい。

【寄稿】ブログを始めるときに大切なのは、気軽に更新できて、思い出をたくさん引き出せること。そして…… ―― 雨宮まみさんから、2014年を“空白”にしたくないあなたに素敵なアドバイス - 週刊はてなブログ

 

何が悲しいって、決して充実してない1年ではなかったのに、それを思い出せないことです。「思い出せない」というだけで、すごく雑に毎日を過ごしてきてしまったような気持ちになるのです。

せめて1年を振り返ったときに、「今年はこんな素晴らしいものを観て、読んで、こんなことに挑戦して、こんなことに悩んで、喜んで、充実した1年だった」と感じられるように、ささやかな記録を残しておけばよかったのかもしれない。と、ときどき思います。

(中略)

人によって、思い出しやすいポイント、記憶の中で印象に残るポイントはそれぞれだと思います。今日行った場所、読んだ本、観た番組、天気や気温、着た服、笑ったツイートなど、それをブログにメモしたときには、ただのメモにしか思えなくても、あとで見返すとそこから、その瞬間にしかなかった空気が立ちのぼってくることがあります。

それは、ちょっとぞっとする体験でもありますが、面白い体験でもあります。確実に言えることは、そうして思い出してみると、常に何かを感じ、何かを考えて生活していたわけで、「無駄に生きていた瞬間なんて、一秒もなかった」と思える、ということです。

 

そう、私は私で生きていたのだ。そして、これを読んでくださっているみなさんも。

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そして2017年の手帳にもまた、「死ぬまでにやりたいこと100」を書き出している。
まだ1/3ぐらいしか書き出せていないのだけれど。
それでも2016年に書いた「やりたいこと」は、100個中38個も叶っている。びっくりだ。それだけ達成容易なささやかなものが多いということでもあるが、自分にとって「やりたいこと」なんてそんなものなのだ、ということはわかった。己の欲望に「上手く」従うと、快楽が得られることもわかった。

来年も良い年にしたい。できれば復職もしたい。さらに言えば、寛解もしたい。
たくさん願うことは罪でも何でもない。それがわかったことが、今年一番の収穫かもしれない。

大阪・光の饗宴2016

大阪・光の饗宴2016に行ってきた。

大阪 光の饗宴2016

 

まずは中之島界隈で開催されているOSAKA光のルネサンスへ。
大阪市役所や中之島図書館のあるあたり。
人はそこそこ多かったですが、ルミナリエほどではない(全く待つことなく見られる)。

実はこの翌日に修理したデジカメが店舗の方に返ってきて…間に合わずiPhoneでの撮影。
うーん、夜景だと完全にデジカメに軍配があがりますね。

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そして生まれて初めてプロジェクションマッピングを見た。
大阪中央公会堂が全く新たな顔を見せる。

元々はこんな感じ。(美しくて大好き)

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それがこうなる!!

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2016年までの歴史を振り返るような内容で、すごく楽しめた。
まるで公会堂が生きているかのような動きを見せていた。
プロジェクションマッピングの虜になってしまいそう。

 

見終わった後はイタリア料理店で夕食を食べ(あたたかな雰囲気のあるとても良い店だった)、御堂筋を通って淀屋橋の駅まで歩く。御堂筋も素敵にライトアップしていた。

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このイベントは1月9日まで。
行かれた後に、淀屋橋で素敵なディナーなどいかがでしょうか。