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日々

「どうやったら日本人に間違えられますか」-ネイティブとノンネイティブを分けるもの

という質問を、日本語が非常に流暢な台湾人に聞かれたことがある。

彼女は私がリアルで繋がっている、(日本に何年も住んでいる訳ではない)外国人の中で、おそらく一番日本語ができる。

外見もそこまで日本人と変わらないし、ファッションも見た瞬間に「あ、この人外国人だな」とわかる感じでもない。

だが、彼女曰く、飲食店などでオーダーする時、外国人であることがすぐにバレるのだと言う。どうやったら日本人に間違えられますか、私の日本語は文法がおかしいですか、それとも問題があるのは発音ですか、スピードですか、と聞かれた。

 

私は少し考え、いや、あなたの文法は完璧だし、発音も綺麗だよ。スピードだって遅くない。あまり考えすぎなくていいんじゃない、と答えた。

 

その場ではそう答えたが、その後も日本語ネイティブとノンネイティブを分けるものは何なのかを考え続けた。何故私たちは瞬時に判別できるのか。

 

彼女の日本語は、思い返せば全てが綺麗にひらがなに分解できるものだった。スピードも遅くなかったけど、ひとつひとつの言葉を丁寧に組み立てて話している感じがあった。

 

その後日本語教師の勉強をしてみて、日本語にも色々と発音のルールというか傾向みたいなものがあることを知った。

要するに、日本人は超適当に話しており、書き言葉(ひらがな)どおりの発音はしていないのである。

 

例えば、母音の無声化。

以前別記事でチラッと書いたものをもう少し説明します。

 

「日本語ネイティブとは、自分の母語が日本語だと思い込んでいる人々のことである」

https://elaineintherain.hatenablog.jp/entry/2020/06/09/002029

 

イ母音とウ母音が、文末に来たり、無声子音(カ行音・サ行音・タ行音・ハ行音・パ行音の子音)に挟まれた時に、声帯振動がなくなり、母音がはっきり聞こえないという現象、それが日本語における母音の無声化。

これだけだと意味不明だと思うので、例を挙げる。

簡単なのは、文末の「です」「ます」。あなたは「す」のウ母音をはっきり発音しているだろうか。だいたい「s」の子音だけで終わっていないだろうか。

また、「腹式呼吸」と口に出してみて欲しい。「フクシキコキュー」。ふ、く、し、き、であなたはそれぞれウ母音とイ母音をはっきり発音しているだろうか?。私(新潟出身)の場合、前の「フクシ」まではほとんど母音をはっきり発音していない。
しかし、近畿や四国ではこの現象が起こりにくいそうだ。「日本語 母音の無声化」でググったら、「母音の無声化は関西出身者が声優を目指すにあたり最も苦労する発音のルール」と書いてあった。なんだ、地域によるじゃん。

 

その他、助詞「が」の発音も地域により何パターンもあることを知り、前回も書いたけど、だんだん「日本人とは、日本語でなんとなく繋がっているつもりになっているだけの集団」みたいな気持ちになってきた。「普段は方言を話しているかもしれないけど、標準語を話そうと思えば話せる気になっている人間の集まり」。

明治時代に政府が近代的な国民国家を目指して、国民教育(義務教育)を始めて、新しく作った「標準語」を日本の隅々まで行き渡らせ、「私たちは日本人である」というアイデンティティを浸透させていった結果が今の日本人である。おそらく、江戸時代までの一般人は「私は○○国の人間」という認識こそあれど、「私は日本人」だなんて思っていなかった。

 

話が少し逸れた。

強いて言えば、日本語が母語の人間は、めちゃくちゃ適当に話している。文法だって、文字に起こせば相当適当なことはインタビューの文字起こしをやってみればすぐわかる。要するに、話す時にあまり考えていないのだ。

 

その「テキトーさ」で私たちはネイティブとノンネイティブを判別しているのではないか、というのが、今のところの私の仮説である。

 

なお、日本語を流暢に話す外国人でも、LINEやメッセージなどで文章を読んでみると違和感を覚えることは多い。あんなに話せるのに、と思うが、どうも書き言葉に関してはまた別の検証が必要なようだ。おそらくは義務教育での作文の練習経験によるものだと思うが。

 

ちなみに、私は英語と中国語に関してはネイティブに間違えられることはハナから諦めている。そもそも、そんなレベルには到底及ばない。それよりも、相手が話すことをどれだけ汲み取れるかを重要視したいと考えている。