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日々

宮田珠己 著『旅の理不尽』 『わたしの旅に何をする。』

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さて、ここでクエスチョンです!(世界不思議発見風に)
「このご時世にお金を出してまで買う価値のある旅行記はあると思いますか?」
…ごめん。多分沢山の人に喧嘩売ると思う。
 
私は、沢木耕太郎の「深夜特急」が非常につまらなく感じる。
当時はネットもないし、長期・長距離の海外旅行に出ること自体が「すごかった」んだろう。だからこそ売れたんだろう。だが、話の内容的にあれってすごいか?しかも「すごいことやってるぜ俺」感が鼻についてしょうがないのである。なあ、海外旅行ってそんなもんなのかい?別に自己啓発のために旅に出る人は否定しないけど、本当にそれでいいのかい?
あの本に憧れてバックパッカーになった人が多い事も知ってる。おかげさまで、私も今はバックパックを担いで色んな国を旅している。先人たちが積み上げてきた経験、ノウハウ、全て頭に入れた上で旅に出ることができる。
今はインターネットを開けばユーラシア大陸横断、世界一周旅行してる人なんてザラにいる。本当に珍しくない。そりゃ、お金もかかるし、仕事だってどーすんだよって感じだけど、特に社会人になってから、汗水流して稼いだ金を使って、色んなものを犠牲にして、旅をしている人は肝の座り方が違う。
自分自身の能力(地理の先生だったとか美容師だとか)を活かしたり、ひたすら自転車を走らせたりして独自の文章を書きブログにしている。年齢だってバラバラだ。インドを旅しまくるアラフォー女子もいる。
しかも、文才に溢れる人が多い。
彼らのブログを読んで得られるのは、「今の世界の」「生の」感想だ。ニュースでは伝わってこない、現地の人との触れ合いだ。しかもブロガーは良いカメラを持っていることが多い。美麗な写真とともに、世界の「今」を彼らの視点から見ることができる。
こんな素晴らしいものが無料で読めるのに、わざわざお金を出して旅行記を買いますか?
昔の旅行にありがちな、「長期の海外旅行に出る俺カッケー」みたいな、ウザい自意識を感じる事もない。
っていうか、今の時代ですら、そういう自意識を持っている奴らには糞食らえと思っている。
いいかい?外国っていうのは、あくまでそこに住む人たちが主人公なんだ。私たち観光客は、ある意味それを「見せ物」として、楽しませていただいているだけなんだ。OK??
日本人だからって舐められて物を盗まれたり身体を触られたり騙されそうになったら怒るべきだけどね。
ちょっと話が逸れるけど、台北のホテルで、日本語の話せる従業員に対してタメ口で偉そうに話す日本人のおっちゃんを見た時は「日本の恥だ!!国へ帰れ!!」と内心ブチ切れていた。
前置きが長くなった。
そんな中で、宮田珠己旅行記は、きちんとお金を払って読ませてください!という面白い本である。個人的には国内旅行モノより、初期の海外旅行モノをオススメする。
『旅の理不尽』は元々は1995年の本を文庫化したもので、『わたしの旅に何をする。』は第一刷が平成19年(2002年)だ。
だから、書かれている国々の時代としてはちょっと古い。
まあ、国なんて数年もあればガラリと変わってしまうので、その点注意して読めばオールオッケーである。何年経とうと変わらない、海外旅行に対する醍醐味だったり、「海外旅行あるある」がそこにはある。
宮田珠己の文才は、文才という陳腐な言葉に当てはめていいのかがわからない。ユーモアに溢れているというか、「なんかよくわかんないけど笑えちゃう」のである。
『わたしの旅に何をする』の冒頭を引用したい。
「私はついこの間までサラリーマンであったら、ええぃ会社なんか今すぐ辞めてやる、そうだ、今すぐにだ、という強い信念を十年近く持ち続けた意志の堅さが自慢である。
 サラリーマン時代の私は、年三回の大型連休には必ず有給をくっつけてぐいぐい引き延ばし、いつも海外旅行にばかり出掛けては、上司に『たいした根性だ』とスポーツマンのようによく褒められた。幸運にも私の上司はできた人で、私がいくら休もうが黙って旅行に行かせてくれた。帰ってきてお土産を渡しても廊下で挨拶してもまだ黙っていたほどだ。」
まあこんな感じで、私は何回も笑わせてもらいました。何よりも、海外を旅行する時の気持ち、トラブルに遭遇した時の苛立ち、「それでええんかーい!!」とツッコミたくなる気持ちがよく描かれていて、海外旅行好きとしてはニヤニヤしながら読めてしまう。ちなみに、冒頭の文章でピンと来ない方は多分相性が悪いのでこんな私の投稿を読むのはやめてYouTubeでも見ててください。
あの、ちょっと長くなるけど、私の大好きなブロガーさん(ユーラシア大陸横断して今はタイで働いている人)の記事を引用するよ。
タマにはちょっと『旅』の事を - 南の方からノラヒツジ
「ここでちょっと自分語りになってしまうのですが
僕が始めて海外放浪したのが19歳の時
年号にして2001年の初めだったのですが
この時は良い意味でも悪い意味でも
海外一人旅に来るような若者は
自分も含めて
阿呆
が大半だったのです
簡単に言うと
聞いたことが無い大学の8年生だったり
本当の意味で海外逃亡しているような連中だったり
僕のような勘違い君が大半を占めていて
本当にどうしようもない
ダメだけと愉快な人たちが多かったのです
んで時は流れて前回の旅
出会う若者さんの
ちゃんとしている事ちゃんとしている事
いや彼らが悪いとは思いません
むしろ打てば響く様なクレバーで
しかも年長者を立ててるような
本当に良くできた子たちばっかりでした
もっと単純に言いましょう
個人旅行に来ている学生さんの
ほぼ大半は
マーチ(MARCH)以上の学生さん
もしくは自分の目標をちゃんと持っている子達
僕はこれはまずいと思いました
僕の中では『旅』というのは
マージャンで言うところの『役牌』に近いもので
役を持っていないようなダメダメちゃんでも
どうにか自分に自信だったり何か別のものだったりを
ほぼリスクなしに得られる場所だと思っていたのです
ですが彼らを見ると
もうすでに『役』をもっていて
さらに『ドラ』を拾いに来ている感じがしてしまったのです
なぜこんな形になったのか?
それはやはり9.11が大きくて
あの衝撃的な映像だったり
時のクソ首相が
『それは自己責任で』と
危険な場所に行ったやつが馬鹿であり
国は守らないよと宣言しちゃったのが大きかったのかなあと思ってます
あんなもん
思春期みせられたらどうやったて
海外怖いと刷り込まれます
んでその刷り込みに大して
『いや俺はそれでも海外に行きたいんだ!!!』と熱意を持つか
『調べてみたけどそんなに危ない事もないっぽい』と判断が出来る子
そんな子達しか海外に出て来なく成ってしまった
と僕はそう感じたのです
でも僕は思うのです
そういう子は別に海外に来なくても
日本でもそれなりにやっていけるんじゃないかと
そして僕は思うのです
本当はもっと来るべき子達がいるのではないかなと
そんな訳で僕は若者さんに声を大にして言いたい
旅になんぞに目的意識や自己啓発の必要性は無い!!!
ただただ楽しくて良い経験になるから何も無いなら今すぐ行け!!!
目標とかエコとかロハスとか自然と一体とかは後付けでいいじゃないか!!
実際僕が始めて行った時代に比べて
ネットのおかげで格段に旅は楽になっているのです
ちょっとググるだけで
その国の情報が手に入り
簡単に宿の予約すら出来てしまうこのご時勢
だから皆
一度で良いから行こうぜ海外
皆が思うほどには
世界には悪意が満ちていないよ
阿呆この上ない旅をしていた僕に対して
色々と教えてくれた旅の先輩に
超感謝してお礼言っていたら
彼はこんなことを言っていました
『君が感謝してるのなら、その気持ちで色々と後輩に教えてあげな
僕らもそうやって教えてもらったんだよ』
別に旅の技術の継承性とかの話ではないですが
その一翼を担えるならば
それはとても嬉しいことなのです
そしてその分母である
旅人若者が増えていって
楽しい事を教えた
僕がモテモテになる未来が来ればいいなあと
心底思ってるのですよ
そんな訳でこの夏は皆
旅に行くと良いと思います
ああひと夏の思い出が
とてもとてもほしいなあ
とっぴんぱらりのぷ
でもね本当に
旅なんて大したもんじゃないけど
大したものなので
皆行くと楽しいと思いますよ」