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日々

吉川康雄 『いくつになってもキレイ!になれる』

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まず申し上げたいのですが、この本は表紙もタイトルもイマイチだと思います。なんかマダムシンコっぽくないですか?(豹柄ではないけど)
著者の吉川さんはニューヨークを拠点とするメイクアップアーティストですが、これでは吉川さんがディレクターを務めてきたブランド、CHICCAのファンしか手に取らないのではないか。
CHICCAはブランド終了が決定し、カウンターは全て閉店、おそらく現在は在庫限りの状態で、2020年9月に完全終了の予定です。
私もおそらくCHICCAを知らない状態だったら手に取っていなかったと思います。
ただ、内容としては学ぶところが多いのでご紹介させていただきます。(一旦ボロクソに落としてその後持ち上げるパターン)
 
この世に生まれた瞬間から始まるエイジング。若い頃は成長と呼ばれ、ある程度を過ぎると老化と呼ばれる。これは中高年のためだけの本ではありません。自分が過去の若さを振り返るようになった全ての人に向けた本です。
「歳をとっていくことを意識することは憂鬱なことですが、実はその悲哀が女性を美しくさせていると僕は感じています。勘違いしないでほしいのは、エイジングの悲哀は、すべての世代、10代や20代にもあるということです。たとえば、モデルの世界では10代半ばで注目を浴びる娘は、20歳になれば、今度は自分が追われる立場になります。5歳年下の新人の娘と比べ、変化していく自分や失われゆくものに気づいた悲哀が、彼女をもっと美しい20代へと押し出すのです。」
「本書は大人の女性に向けたメイクの本です。では、そもそも大人って何なのか。
僕は、ちょっと変わったとらえ方ですが、『エイジングを感じ始めたひと』のことを、そういいます。敏感なひとは10代後半でそういう意識をもつでしょうし、30歳になってから自覚するひともいるでしょう。
いずれにしろ、自分の過去の若さを振り返るようになったときに、ひとは大人になるのだと思います。
僕の考えでは、自分が日々変化していることに無頓着、もしくは、目をそむけているひとを大人と呼ぶことはできません。なぜならそういった”気づき”こそが、自分を大切にすることや、自分らしい魅力を考え始めるきっかけを作ってくれるからです。」
この「エイジング」のとらえ方には衝撃を受けました。日本でアンチエイジングというと、シワを防止したりする化粧品を指したりしますが違うのだなと。
「第1章 いくつになっても”大人かわいい”のすすめ アンバランスにこそ魅力がある」というタイトルなどは、もはや「カワイイ」という単語にアレルギー症状を持つ私にはおぞましくて鳥肌が立つものですが、吉川さんの作品集を見ると、必ずしも日本的カワイイ(=若さ至上主義で幼さを強調する)を追求しているメイクアップアーティストではないことがわかります。どちらかというと艶かしく、その人の底から湧き上がる生命力を感じさせるメイクが多いのです。特に目を引くのがヒラリー・クリントンの写真。下記URLに記載の白黒写真は私がこれまでに見たどんなヒラリーより美しいです。
(※吉川さんはツヤ肌の提唱者)
作品集URL↓

lateliernyc.com

ヒラリーのページ
単純にテクニック的なところを言えば、ベースメイクはツヤ肌を心がけること、似合わない色のアイシャドウやリップは存在しなくて塗り方さえ工夫すれば誰にでも何でも似合うこと、などが参考になります。
本当は吉川さんのプロダクトに直接触れた方がその哲学を理解できると思います。
CHICCAは元々パッケージが可愛すぎて手を出す気にならなかったのですが、ブランド終了の知らせが出た時に熱心なファンから布教され、いくつか試してみました。
ファンデーションをタッチアップした時の第一印象は「生まれたての赤ちゃんみたい!」。そこまでは言い過ぎだけど、遠目に見るとマイナス10歳肌になる。(これは本当)
口紅はびっくりするほどなまめくツヤで溢れ出る生命力。「5分の2発色」と吉川さん自身が言っているように、決して鮮やかな発色ではないのに透明感があり、確実に顔の印象が変わります。めくれ上がったような唇の演出。
血色ではなく、「体温」になりすますチーク(プロダクトを見るとあまりの色鮮やかさにビビるが薄づきなのでつけてみると違和感はない)。
なまめくアイシャドウ。
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別に「カワイイ」メイクにはなりません。でも、その人が元から美人であったかのような印象になります。あまり「化粧してる感」が無く、厚化粧を徹底的に否定するブランドです。
終了が惜しい限りです。(Kaneboさんや…)
なお、吉川さんの別の著者『生まれつき美人に見せる』は初めて読んだ時猛反発しました。
「男性は女性をこういう目線で見てるからこういうメイクをした方がいい」ということがたっぷり書いてあるからです。
「ウルセー!私は男性のためにメイクしてるんじゃない、自分のためにメイクしてるんじゃー!」と思っていましたが、ある日考えが変わりました。
「つい今し方、その辺で生の内臓喰らってきました」みたいなダークなリップを塗り、アイシャドウも濃い目に塗り、睫毛もバッチバチにしていたら(※当時、半分武装のためにメイクしていた)夫から大変不評だったのです。
その時に再び本を開くと、非常に勉強になりました。その時会う相手、一緒に出かける相手によってメイクを使い分けるのも、お互いが心地よくいられるために大事ではないかと思うようになりました。
ちなみに、吉川さんの本は「メイクは女性がするもの」という考えが書かれており、現代社会ではそれが一般的かとは思いつつも、今はFIVEISMみたいなメンズメイクのブランドも出てきていますし、KATEも男性モデルを使い始めたし、私がshu uemuraを好きなのは、男性モデルも積極的に起用しているからです。あとモデルがアジア人ばっかりなのもいい…日本のブランドなのに西洋人モデルばかり起用するところのなんと多いことか。(チコちゃんのナレーションの声で)(別に絵面としてはいいが参考にならない)
メンズメイクはアイシャドウやリップの色で遊ぶよりも、「ベースメイクで長年のコンプレックスだったニキビを隠せて自信がついた」などと言う人が多い気がしますね。
ちなみにメンズメイクのYouTuberだと松井力さんがお勧めです。アメリカ生まれアメリカ育ちのジャパニーズアメリカンですが、日本語が綺麗で語彙力豊富。「可愛い」しか連発せず何の参考にもならない、語彙力貧困な日本の女性YouTuberに食傷気味の時にオススメ。
最近の私はMiMCの石鹸落ちクリームファンデーションを使い(肌負担を全く感じない軽さ。高いけど下地が不要なので結果的に安いと自分に言い聞かせている)、ポイントメイクはNARSでバッキバキのメイクをしていることが多いです。アイブロウ、マスカラ、アイラインはプチプラを使用、キャンメイクは神で日本コスメ界の良心。あとマスカラは台湾コスメの1028が素晴らしいのを出してます。台湾女子も「崩れにくい!很好用!」と太鼓判を押してます。日本では売ってないので台湾に行ったら買ってね。
【余談】
なお、Instagramではshu uemuraの本国(文章は全部英語)とshu uemura Taiwanのアカウントを両方フォローしていますが、本国アカウントでは切れ長の目のお醤油顔のモデルさんが多いのに対し、台湾のアカウントではお目目ぱっちりのモデルさんだったり、いかにもな中華美人だったり、今流行りのチャイボーグみたいな人も出ていて、同じブランドでも国によって美の価値観の違いに驚かされます。