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日々

雨宮まみ「東京を生きる」

雨宮まみさんが亡くなったことは前に書いたけど、著作を全部読みたくなって、これまで怖くて手が出せなかったこの本を手に取ってみることにした。

東京を生きる

東京を生きる

 

東京を舞台にした、ヒリヒリしたエッセイの数々。

ネットでの連載は読んでいた。その後書籍化したことを知ったものの、どうしても手に取ることができなかった。

私は大学時代の4年間を東京で過ごした。人生の中で最もひどい4年間だったと思う。私は全然東京が好きになれなかった。多くの人々。忙しい電車。混雑、混雑、混雑。どこに行っても人がいっぱいで、飲食店では席と席の間が驚くほど狭くて、この都市では空間が一番高価なのだと知った。
当時の精神状況は最悪だった。死にたくてしょうがなかった。どうして自分だけ常に心がどしゃぶりで、みんなが太陽のもとで笑っていられるのか、不思議でしょうがなかった。一度医者にも行ったが、先生と全く合わずに行くのをやめてしまい、ひどくトラウマになってその後受診しなかった。精神科が恐ろしくてしょうがなかった(今では当時の自分をひっぱって別の病院に連れていきたいぐらいである)。

 

決して明るい本ではない。行き場のない数々の思い。地方出身者であるということ。故郷に対する複雑な思い。尽きることのない欲望。東京という都市への、欲情。

おそらく、魂を削って書かれた本だと思う。それだけ、読者の魂にもひっかき傷を残す。

どの章も他人事とは思えず、東京で暮らしていた頃を思い出しては苦しくなり、でも文章に惹かれる気持ちを止められない。何度も本を閉じては開いた。

 

雨宮さんのInstagramを見ていると眩しくて、雨宮さんの暮らしていた東京と、自分の暮らしていた東京が別の都市のように思える。
でもきっと同じ都市なのだ。雨宮さんのInstagramは楽しい投稿ばかりだけれど、この本を読んでいると楽しいばかりでもなかったのだろうなとわかる。

 

この本を本棚の中でも一番お気に入りのコーナーに置こうと思う。
雨宮さんの文章は、その視線は、決して読者を裏切らない。