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日々

旅本:宮田珠己「だいたい四国八十八ケ所」

久しぶりに宮田珠己を読んだ。 
宮田珠己は好きなエッセイストで、旅モノをよく書く。

 

だいたい四国八十八ヶ所 (集英社文庫)

だいたい四国八十八ヶ所 (集英社文庫)

 

 


だいたい四国お遍路さんの旅。温かく楽しく読めました。 
複数回に分けているとはいえ、全部歩いているのがすごい。 
自分自身が西国三十三ヶ所巡礼をやったのもあって、「巡礼の旅ってこんなことあるよなあ…」と(私は車やら電車やら文明の利器を使いまくったにせよ…)ところどころ頷く。 


ピンときたのはここ。 
そうそう、「なんでわざわざ海外旅行に行きたがるの?」という人に対して私はこれが言いたかったんだよ…!という内容。 

「お遍路であれ何であれ 、旅の醍醐味のひとつは 、わけのわからないことや 、予定外の事態に遭遇することである 。ちょっと予定通りに行かないからといって苛立っては 、旅の面白さは見えてこない 。」 
「肝心なのは 、時間や合理性に対する感覚が変容することであり 、一筋縄でいかなかったり 、思い通りにいかなかったときに 、その理不尽さややりきれなさを味と思ってこそ 、旅が旅になるのである 。」 


この「時間や合理性に対する感覚が変容する」っていうのが旅の醍醐味なんですよねー!と頷いてしまいました。 
私の場合、海外だとその差を少しだけ楽しめて、日本だとイライラしちゃうのも変な話だけど。(たぶん、生活かかってるかによる…旅行だったら少しの遅れは許容できても、仕事では無理だもんな。あと母国語で文句を言えるかによる。文句を言えるなら言いたくなってしまうもの) 


あとはここも。決して身体の強くない人間として、励まされた箇所。 
健脚自慢をするために、もしくは自分の体力があることを確かめるために、いかに自分が速く歩けているかを自慢しながら歩いている人たちの話が出てくる。 

「かくいう私も信仰心などまったくないが 、スピ ードにこだわらないようこだわらないよう 、それだけは気をつけながら歩いてきたつもりだ 。速さ 、日数などにこだわることで 、何かが決定的に損なわれてしまう 。そういう意識は 、はじめから持っていた 。四国にいながら四国を見ていない 、そんなお遍路になるのは避けたかった 。」 

旅のスピードは人それぞれでいいんだ、見たいものをきちんと見られるスピードでいいんだ。 
弾丸ツアーが苦手な私に沁み渡りました… 


こうしてみると、意外と得るところの多い本でした。 
旅の本には癒されるなあ。自分には旅をするだけの健康もお金もなくても。