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日々

「この世界の片隅に」2回目

この世界の片隅に」2回目を見てきた。

以下、微妙にネタバレ含む。

 

1回目は何の予備知識もなく見て、2回目は原作の漫画を読んでから見た。また違った味わいで、1回目よりもずっと面白かった。どこが違うのかとか、それでも原作のエピソードの片鱗がとても自然な形で残されていたりして、ひたすらすごいなと思いながら見ていた。

印象的なのがリンさんのエピソード。尺の都合でかなりカットされているが、「誰でも、この世界に居場所はそうそうなくなりゃせんのよ」(うろ覚え)という言葉は残されている。原作ではリンさんとの交流の中でしっかり出てくるが、映画だと一瞬だけ回顧シーンの中で出てくる。世界に居場所がないように思いがちな私には、この台詞は胸に刺さる。そしてエンドロールでクラウドファンディングに貢献した人の名前が流れる時のイラスト。1回目は正直理解できなかったのが(特に前半)、ああ…リンさんの一生だ…とわかる。また、原作の「秘密を知らない方が良いこともある」(リンさん)「秘密を知ってしまっても、これはこれで贅沢な気がするよ…」(すずさん)という場所(例によってうろ覚え)。原作で秘密とされている習作さんとリンさんの過去を知らない原作未読の人もこの映画を楽しめるし、原作を読んでいる人も楽しめることに重なっているな、と思えた。映画では出てこない台詞だし、原作者もそういうことを考えて書いたものではないと思うけど。

テルさんの名前も、一瞬だけ出てくる。原作のテルさんのエピソードはとても好きだ。これも、片鱗が見えてとても嬉しかった。たくさんの言葉が重なりあうシーンで出てくるので、気づく人だけ気づく。自然な形で忍ばされている。

 

ストーリーがわかっているので、1回目は登場人物の心情を追うだけで必死だったのが、2回目は背景に目がいく。この家、こんなに大きな本棚があるんだ、とか。演出にも目がいくため、より「映画の力」を感じられる。

 

前回は字幕なし、今回は字幕あり。字幕ありだと音楽が流れる時「♪」と左下に出てくる。おかげで、1回目の時はなんとなく聞き流してしまっていた音楽に耳を傾けることができた。

台詞もしみじみ味わえる。「お兄ちゃん」の表記が全部「鬼ィちゃん」になってるなとか。すずさん、すみちゃんだけが言っているならわかるのだが、親がいる場面でもそう。「隣保館」とか耳慣れない言葉が漢字があると理解できる。

 

この映画は特に戦争体験世代が見に行くように思うので、字幕があるのはとても良いなと思った。もう耳が遠い人もいるからだ。私の祖父も耳が遠いが、字幕なし版を見たらしい。祖父は洋画ばかり見に行く。字幕があるからだ。祖父の耳にも、できるだけ多くの音楽や台詞が届いていますように。

 

散漫な文章になってしまったが、本当に良い映画なのでまだ観ていない人には観に行って欲しいと思うし、原作未読で観た人には原作を読んで2度目を観て欲しいと思う。本当に。ぜひ映画館へ足を運んでみてください。